Wednesday 24 September 2008

Jesus Camp

Jesus Camp, 2006
Jesus Camp

このドキュメンタリーは、今日アメリカで人口の1/4とも言われるエバンジェリカル(※福音派)の活動のうち、特に"Christian soldiers in God's army"のために子供を"伝道"するキャンプを追いかけたもの。子供が見事に"born-again"する姿が映し出される。正直、言葉を失う。

率直に言えば、何かを書くことを躊躇する。また有り体には、概ね、生活する上で宗教が争点にならない社会に生まれて良かったと思う。

Kalafの感覚的には、それは遠からず一般的な日本人の感覚であると思うが、"洗脳"に近い。例えば、キャンプでは、伝道者の説教に子供が呼応し涙を流す。おそらく連鎖反応として次々に泣き出す効果なのであろう。また、目を閉じ、手のひらを上にし胸の高さまで上げ、伝道者の言葉をひたすら繰り返す。最もぞくっとしたのは、コップを"悪(evils)"に見立て、子供が金づちで叩き割るシーンだ。これは言うまでもなく、ブッシュ大統領のイラク戦争会戦時を思い起こさせる。

ドキュメンタリーによると、エバンジェリカルの43%が13歳までに"born-again"、つまり帰依を経験するらしい。ネガティブに言えば洗脳される。エバンジェリカルが政治的に無視できないどころか、大統領選挙に見られるように大きな影響を及ぼす事実を考えると、キャンプの映像を見ながら、伝道者の真の目的は何なのだろうかとさえ思う。

例えば、価値観の多様化、個人主義崇拝、拠りどころの喪失、社会の閉鎖化、コミュニティの崩壊、子供の自尊心等、社会学的あるいは心理学的にエバンジェリカルの伸張は説明が可能なのだと思う。誤解を恐れずに言えば、今日における宗教が人間の連帯への渇望を潤す働きを少なからず持つことは否定できないからだ。歴史や文化、伝統といったルーツが相対的に乏しいアメリカでは、なお更その一体感が国旗や大統領(候補)さらにはスポーツ等、"共感"が得られやすい対象に向けて投影される。だからこそ、宗教が大きな運動や潮流になり得る。

とにかく(Anyway)、アメリカ社会の背景を知り得るドキュメンタリーとして、お薦め度は4/5。今年の大統領選挙をこういう視点で眺めてみよう、そう感じさせる1本。なお、ドキュメンタリー自体は、必ずしもエバンジェリカル派の視点で作られたものではないと思われる。

ところで、日本は、良し悪しは別として、これまで大きな拠りどころであった"ムラ"というルーツが衰退する過程にある。ムラ、この連帯に代わる価値観が十分に醸成されていないところに、日本社会が抱える様々な事象の背景があると考えられる。

※)エバンジェリカル(福音派):
- ドキュメンタリーは、"エバンジェリカルは、(罪や罰からの)救済を得るためには、キリストを救世主として受け入れることにより生まれ変わらなければならないと信じる"と始まる。

- Wikipedia等によると、聖書を忠実に解釈することを規範とし(この意味でダーウィンの進化論を否定する)、キリストの死と復活を重んじる。また、キリストの伝道者として"永遠の救済"を訴え改宗を説く活動を精力的に行う。

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